コンドウ ユミコ   Yumiko KONDO
  近藤 優美子
   所属   京都外国語大学  ランゲージセンター
   職種   准教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2022/03
形態種別 学位論文(博士)
標題 補助動詞“しまう”の研究―本動詞との連続性に着目して―
執筆形態 単著
掲載区分国内
出版社・発行元 大阪大学言語文化研究科 博士論文 未刊行
概要 本研究では,補助動詞“しまう”(以下“テシマウ”)の2つの用法が,本動詞“しまう”からの連続性の中にあることを,形態的・統語的性質に着目して明らかにした。また,それに用いた観察・分析の観点が補助動詞全般にも適用しうる可能性を示した。
第1章では本研究の背景と目的を述べ,第2章では考察の前提として次の3点を整理した。
1点目に本研究における補助動詞の外延を定め,2点目にテシマウの用法を「終結点明示用法」と「評価表示用法」に定めた。
3点目に,本動詞“しまう”からの連続性の中でテシマウの2つの用法の関係を説明する観点として,「文法化」の先行研究を概観し,共時的な分析である本研究における「文法化」を定義した。
第3章から第5章では,テシマウの2つの用法間の形態的・統語的側面の異なりを明らかにした。
第3章では,(1)主節内ではテシマウと前接動詞との間に副助詞を挿入することができるか否か,(2)テシマウを含む補助動詞全般が,前接動詞が起伏型の場合,主節では本来のアクセント型を保持するか否かという現象から,テシマウを含む補助動詞全般は,主節内よりも,従属節内での方が動詞としての自立性が高いと論じた。
第4章では,テシマウを否定形式にすることができるか否かが,用法によって異なることを示した。 また,補助動詞“みせる”の用法間においても同様の観察が得られることを指摘した。
第5章では,テシマウの2つの用法が,異なる意味的構造を有すると論じた。
この根拠として,尊敬形式・使役の助動詞・授受の補助動詞,可能表現のそれぞれを伴うテシマウの文でテシマウが現れる位置が用法によって決まることを指摘した。              
第6章では,第5章までで明らかになった事実を「文法化」の観点から分析した。意味的側面については,第2章の議論を,本動詞“しまう”の持つ実質的な意味からの「漂白化」の指摘としてとらえなおした。形態的・統語的側面については,第3章から第5章の議論が本動詞“しまう”からの「脱範疇化」として説明できることを示した。最後に,これらの形態的・統語的側面の異なりは,終結点明示用法のテシマウは動詞により近い性質を有するのに対して,評価表示用法のテシマウは「助動詞」により近い性質を有することを示すものであるとまとめた。
第7章では本研究のまとめと今後の課題を述べた。