概要 | 古代メソアメリカ文明が栄えた現在の国々において、多くの古代遺跡が世界遺産登録されている。特にメキシコでは11件(2014年現在)が古代遺跡に関するものであり、他の中米諸国と比較して圧倒的な登録数を誇る。では、古代メソアメリカ文明の中心が、現在のメキシコ合衆国の領土で繁栄したため、このような登録件数に偏りが見られるのだろうか。確かにメキシコの領域内では、数多くの文明が興隆し、古代人の遺産を後世に伝えるべきものが多く存在する。しかし、グアテマラやベリーズなどの国々も古代マヤ文明の中心地であり、考古学史的に無視できない数多くの遺跡が存在している。たとえば、古代マヤ王権の形成過程を解くカギとなるサン・バルトロ遺跡の壁画や、ベリーズ沿岸部で行われていた古代の製塩遺跡カックナアブが挙げられる。ある国における登録数の多寡が、必ずしも古代社会における文化レベルの成熟度を表しているのではない。本章では、メソアメリカの世界遺産とツーリズムの関係について論じている。 |