タテイワ レイコ
Reiko TATEIWA
立岩 礼子 所属 京都外国語大学 外国語学部 スペイン語学科 職種 教授 |
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発表年月日 | 2021/06/06 |
発表テーマ | コンキスタドーレスが直面した死と恐怖 |
会議名 | 日本ラテンアメリカ学会第42回定期大会 |
主催者 | 日本ラテンアメリカ学会 |
学会区分 | 全国学会 |
発表形式 | 口頭(一般) |
単独共同区分 | 単独 |
開催地名 | オンライン |
概要 | 本報告では、16 世紀の新大陸において、コンキスタドーレスが直面した死に対する恐怖心について、アナール学派の感情史の枠組みを用いて考察し、恐怖心が征服活動にどのように結びついたか分析した。とくにドリュモー(1997[1978])によるヨーロッパ中世の人々の恐怖の分類を参考に、今回は海、自然、渇きと飢え、先住民との戦闘と傷の数、人身供犠を分析対象に選び、コルテスのCartas de relacion、ゴマラのHistoria general de las Indias、ディアス・デル・カスティーリョのHistoria verdadera de la conquista de la Nueva Espana、ヌーニェス・カベサ・デ・バカの“Naufragios”から該当項目の描写を抽出・分析した。その結果、コンキスタドーレスは、神に対する畏怖の念を持ちつつも、中世の人々が生命や生活圏を脅かすとした恐怖(海、渇きと飢え)に加えて、新大陸ならではの恐怖(自然、先住民との戦闘や傷の数、人身供犠)を日々経験したことを明らかにし、新大陸の征服は、死からの回避、死に対する恐怖の克服のプロセスであったと結論づけた。また、4 つのエゴ・ドキュメントは征服史を雄弁に物語る資料であることを確認するとともに、とくにコルテスのCartas de relacion には、ドリュモーが指摘するように、当時の貴族階級の名誉心に訴える文体や内容に仕上がっている点は否めないことの見解を示した。以上に対し、討論者の安村氏からは、今後の研究の方向性の指針として①ドリュモー論をいかに評価しているか、②「征服者」の個別化あるいは一般化をどう捉えるか、③征服活動の当事者(コルテス)、経験を聞く者(ゴマラ)、経験を書き残す者(ディアス・デル・カスティーリョ及びヌーニェス・カベサ・デ・バカ)との叙述の溝をどう埋めるか、④ラテンアメリカの歴史的経験をどのように語るかとの問いかけがあった。また、フロアからは、征服者の死生観、タウシグの議論を踏まえた20 世紀の植民者の恐怖との連続性あるいは断続性、植民地にわたった人の職業別の恐怖について質問があった。本報告はまだ取り組み始めたばかりの研究内容であったため、いずれの質問にも満足には対応できなかったが、今後は頂戴したコメントや質問を考慮して、考察を進めていく所存である。 |