カバタ シゲル   Shigeru KABATA
  嘉幡 茂
   所属   京都外国語大学  国際言語平和研究所
   職種   嘱託研究員
発表年月日 2020/01/20
発表テーマ メキシコ考古学とコイントス:マンガを介した地域社会のアイデンティティー形成支援
会議名 文化遺産国際協力コンソーシアム・第13回中南米分科会
主催者 文化遺産国際協力コンソーシアム
学会区分 研究会・シンポジウム等
発表形式 口頭(招待・特別)
単独共同区分 単独
招待講演 招待講演
開催地名 東京
発表者・共同発表者 嘉幡茂
概要 メキシコでは、16世紀の征服された歴史とその後の特異な文化的混血から、人種問題が複雑となり不安定なアイデンティティーが形成されている。特に中央政府は国民を統一するため、古代文化を取捨選択し、選んだ文化に過剰な栄光を与えてきた。テオティワカン(前150~後600年)からトルテカ(後900~1150年)へ、そしてアステカ(後13251~1521年)へと古代史を単系化し、これ以外の古代社会に政治的価値を見出さなかった。そのような公定の古代文化に歴史的な繋がりや文化的誇りを見出だせない周縁の人々は、政府が形成したナショナリズムを共有できず、アイデンティティー形成の拠り所を失っている。一方、古代遺産の取捨選択は、学術調査にも弊害を与えている。歴代の政府は、テオティワカンを古代国家の起源と定め、国家プロジェクトを率いてきた。この政策は、テオティワカン遺跡内の考古学データを増加させるが、先行社会や周辺地域のものを減少させている。さらに、周辺地域の社会動向は中央の影響下にあるとの偏った観点(テオティワカン中心史観)が形成され、同時に、先行社会との歴史的連続性という観点の欠如を促した。政府の資金援助による海外学術調査には、文化交流や地域社会への貢献も問われるが、メキシコにおいて現状は厳しい。メキシコは古代文化遺産の宝庫であり、国際調査団が頻繁にフィールド・ワークを実施している。しかし、メキシコの国民を対象とした成果発信は乏しい。結果、地域社会の人々にとって、我々海外から来る研究者は自国の利益を優先させる存在と理解されている。彼らのアイデンティティーのシンボルとなりうる文化遺産をなぜ研究するのかに対し明確な答えを用意せず、また彼らの立場を考慮して説明できなければ、調査結果は自国と一部の知識階層にのみ行き渡り、海外研究を介した国際文化交流は実現しないと考える。このような状況を踏まえ、発表者は、テオティワカンに先行するトラランカレカ遺跡(前800~後300年)で発掘調査とパブリック・考古学調査を実践している。本発表では、ナショナリズムとメキシコ考古学の関係、これによる歴史解釈・復元の課題点、ここから派生している地域社会のアイデンティティー形成の問題点、そして発表者が実践している改善策について議論する。