コウノ ヒロミ   Hiromi KONO
  河野 弘美
   所属   京都外国語短期大学  キャリア英語科
   職種   教授
発表年月日 2023/09/02
発表テーマ 『幸福な王子』(1888)の政治性と社会改良への社会思想をテキストと映像通して理解する力を育む
会議名 ATEM (映像メディア英語教育学会)西日本支部大会20周年記念大会
主催者 ATEM(映像メディア英語教育学会)西日本支部
学会区分 地方学会
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 単独
国名 日本
開催地名 京都外国語大学
開催期間 2023/09/02~2023/09/02
概要 本発表は、オスカー・ワイルド(1845-1900)の短編小説『幸福な王子』(1888)に宗教的な救済のメッセージがあることに加え、社会改良を訴える政治性が内在する事を、テキストと映像を使用しながら読み取ることを目的としている。『幸福な王子』は、児童文学に位置付けされることにより寓意物語と解釈されることが多い。そのため、人間の道徳心をただす教訓物語としての意味合いが反映されている作品として理解される傾向が強い。しかし、『ヴィクトリア朝の文芸と社会改良』(2011)で向井秀忠が「貧富の格差の問題こそがこの作品(『幸福な王子』)の中心的なテーマと思えてくる」と指摘しているように、資本主義の台頭により二極化したイギリス社会の貧困問題が本作品では浮き彫りになっており、宗教的な救済の枠を超えた国家レベルの問題対策が必要であり、社会システム改良への政治性が強く反映された作者オスカー・ワイルドの思想が込められていることが解る。
本発表では、映像(VHS)『幸福な王子』(The Happy Prince, 1987)と『幸福な王子』(1888)の英語版テキストを使い、19世紀イギリス社会を理解し読解する学習方法を提案し、社会システム改良への政治性を読み取ることを目的とする。英文学の読み手は、物語を原書で最初読み内容を想像し、映像で展開される確固たるイメージと内容をつなぎ合わせ、内容理解をすることができる。英語学習者が英文学を読む際、英語そのものの難易度により読解が困難なケースがある。また、内容がイメージできず、内容理解が不可能となることもある。しかし『幸福な王子』の英文は比較的シンプルで理解しやすく反復した英語表現が使われているため、英語を読み、聴きながら、内容を想像し、映像を通して情報を読み取り、情報に解釈を加える英語学習のハードルがより低く、ワイルドが発する社会改良へのメッセージを読み解くことがよりしやすい利点がある。その学習方法を本発表では提案していく。